一生に一度の「好き」を、全部きみに。

夜、自分の部屋でベッドの上でスマホをいじっていた。

調べるのは『拡張型心筋症』について。

何度読み返してみても、どれだけ色んな記事を読んでも、書いてあることは全部同じ。

拡張型心筋症は軽度から重度まで残された心臓の機能の問題によって病状は様々。でも私の場合は重度で、助かる道は移植しかない。

移植しなければ私は二十歳まで生きられない。

これまでは、それが私の運命なら仕方ないって思ってた。精いっぱい生きれば、自分の運命を受け入れられるだろうって。

それでも今は死にたくないって……そんな風に思ってる。

そのためにはどうすればいいのかって思って調べても、移植以外に方法はないらしい。

移植の登録をしていても、移植できずに命尽きてく人がほとんどとネットで読んだ。ドナーはそう簡単には現れない。

人の心臓をもらってまで生きたいのか、私は。

もんもんとした考えがぐるぐると頭の中を巡っている。

ギュッと目を閉じると浮かんでくる咲の顔。

……生きたいよ。

『消毒完了』

そう言って咲が笑ったその瞬間、私、もっと生きたいって。

なぜだかそんな風に思ったの。

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