一生に一度の「好き」を、全部きみに。

だって、私は


真夏の昼間。一日のうちで一番陽が高く、最も暑い時間帯。

蝉の鳴き声が響く中、花菜がこっちに向かって駆け寄ってくるのが見えた。

「葵、お待たせ~!」

「花菜!」

夏休みに入って今日は花菜と駅で待ち合わせ。

花菜はミニスカートにダボッとしたTシャツを着て、ボーイッシュ風のスタイル。学校のときとちがってメイクもバッチリだ。すごく似合っててかわいい。

対する私は白のロングワンピース。きれいな感じではなくラフな格好。暑いから髪をひとつに結んでいる。

「それにしても鳳くんがライブに出るとはね~! あとで黒田も合流かぁ。それまではふたりで思いっきり楽しもうね! どこいくー?」

「あはは……うん」

なんだか空元気。原因はわかってる。それでも今日は咲のライブだからと思って、気合いを入れた。花菜と遊ぶのだって、楽しみにしてたんだ。

大丈夫、うまく笑えているよね。

ふたりでカフェに入って涼むことにした。冷房が効いていて、とても心地いい。

「葵は飲み物決めた?」

「うん」

店員さんを呼んでオーダーする。

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