一生に一度の「好き」を、全部きみに。

「かけるーん、だって。だっさ」

「え!? 花菜ちゃん、それって嫉妬?」

「はぁ? なわけないでしょ!」

「俺、うれしい……!」

「だからちがうって言ってるでしょ、バカ」

「花菜ちゃーん……! 大好き」

「うるさい」

なんだかんだ言いつつ、花菜もまんざらじゃないような……?

そう言ったら怒りそうだから言わないけど、お似合いだと思う。

ライブハウスは以前と同じ場所だった。開場前から列に並んで順番待ちをする。

にこにこ顔の翔くんと呆れ顔の花菜。そして、どこか緊張している私。

今日は平木にもきちんと伝えて了承をもらった。いつもなら夜に出歩くなんてとんでもないって顔をされるけど、今回はちがった。

私の言い分をちゃんと聞いてくれたの。どういう心境の変化かな。それでも帰りは迎えにいくと言われたけど。

「そういや、まだ咲には花菜ちゃんと葵ちゃんがくるって言ってなかった。ビックリするだろうなぁ」

「見えないでしょ、あたしたちの姿なんて」

「いや、結構見えるらしいよ。俺、毎回あいつに居場所言い当てられるもん」

「へえ、よく見てるんだ」

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