一生に一度の「好き」を、全部きみに。

私がきたって知ったら、どう思うかなぁ。

嫌かな。

もう嫌われちゃった?

開始時間が近づいてくるたびに、そんな不安が胸をよぎる。バクバクと悲鳴をあげる心臓。

会いたいけど、会いたくない。でも、会いたい……。

「葵、大丈夫? 具合いが悪くなったら、ちゃんと言ってね」

「大丈夫、ありがと。花菜」

「え、葵ちゃん調子悪いの?」

「ううん、大丈夫だよ!」

「そ? 咲のヤツ、この頃様子がおかしいからさ。葵ちゃん見たら元気出ると思う」

そんなことないよって笑ってごまかした。

ライブが始まると会場の照明が落とされ、ステージにスポットライトが当てられる。

咲たちの出番はどうやら中盤のようで、まだかなまだかなってそんなことばかり考えながらステージを見つめた。

人混みに紛れながら、もみくちゃ状態。

本当にこれで私がどこにいるかわかるのかな。

わかってほしいような、ほしくないような。

「次だぞ」

翔くんの声がして大きな楽器の音が響いた。一度聴いたことのあるメロディに懐かしさがこみ上げる。

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