一生に一度の「好き」を、全部きみに。
咲は私の目の前でピタリと足を止めた。
「な、なんで」
こうも私の心を揺さぶるの。
「ステージから葵の姿が見えたから」
ウソ、気づいてくれてたんだ……?
それだけで単純な私は舞い上がりそうになる。
「途中で気づいて、歌詞まちがえそうになったし」
頬をかきながら無邪気に笑う咲に不覚にも鼓動が脈打つ。
そんな風に笑われたら……。
気持ちとは裏腹に、心が好きだって叫んでる。
「これから時間ある?」
「…………」
どう、しよう。
どうしたい……?
私は……。
視線を巡らせた先、咲の背中越しに花菜と目が合う。
花菜は大きく頷きながら力強くガッツポーズをしてくれた。隣で翔くんも笑顔で拳を握っている。
『がんばれ』そう言ってくれてるような気がして、胸が熱くなった。
ちゃんと向き合わなきゃ。
「外でもいいかな? 落ち着かなくて」
周りからの好奇の目に耐えられそうにない。
「ん、わかった」
ジーンズに無地の黒いᎢシャツとラフな格好の咲だけど、それだけでも十分絵になっている。