一生に一度の「好き」を、全部きみに。
絞り出したような切実な声に、胸が痛くて苦しくて。
「友達としてって意味じゃない。女として葵が好きだ。お前しか見えない」
前だけを見て、隣を向くことはしない。顔を見たらすべてをさらけ出してしまいたくなる。
「葵は俺のことどう思って……」
「好きじゃ、ない……っ」
ズキンと大きく胸が痛んだ。
こんなに好きなのに、本音が言えないなんて……。
大丈夫だと思っていたのに、なに、これ……。
胸が張り裂けそうだよ。
「ウソ、だろ? 葵も俺と同じ気持ちなんじゃねーの?」
「……っ」
泣きたくないと思えば思うほど、反対にじわじわ涙がこみ上げた。
ウソだよ。大好きだよ。でも……言えないの。
だって、私は──。
「葵」
膝の上で堅く握った拳の上に、大きな手のひらが重なった。
その手はとても温かくて、弱りきった私の心を優しく包み込んでくれているよう。
目の前がゆらゆらボヤけて、頬に熱い涙の雫がこぼれ落ちる。