一生に一度の「好き」を、全部きみに。
もしも私が病気じゃなければ……。
もしもこの先ずっと長生きできるなら……。
咲の隣にいられるなら……。
迷わずこの手を取って、大好きだって伝えるよ。
「葵……?」
戸惑うような声がした。きっとそんな咲は私の涙に気づいてる。でもなにも言わなかった。
「わ、私……っ」
嗚咽がもれて涙が次から次に流れ落ちる。
言葉が出てこない。
だって私は咲を傷つける言葉を言おうとしてる。
ごめんね、そんな私を許さなくていいから。
涙をぬぐって拳を握る。もう大丈夫だよというように、咲の手のひらを押しのけた。
「私の病名ね……拡張型心筋症っていうの……」
そう口にした途端、張り詰めた空気に変わったのを肌で感じた。
「かなり重度なんだ……。本当はね、こうして泣くのも、心臓によくないの……っ。私のお母さんも同じ病気で……二十歳で私を産んでから、すぐに死んじゃった……っ」
喉の奥から絞り出した超えは、カラカラに渇いてかすれていた。