一生に一度の「好き」を、全部きみに。
そうだ、夢だ。あれは悪い夢だ。
葵が死ぬなんて、そんなはずはない。
震える指でスマホを操作し『拡張型心筋症』と文字を打ちこむ。
そこに書いてあった記事が、幻じゃないことを告げていた。
読めば読むほど、知れば知るほど、絶望的な気分になった。見るんじゃなかった。それなのに見ずにはいられなかった。
重度の拡張型心筋症。普段の葵からはそんな風に見えなかった。
俺の前で無理してたのかよ?
死ぬ……。
ドナー……。
移植手術……。
二十歳まで生きられない……。
ざっと断片的に思い出せる言葉はそれだけだったが、十分だった。
葵は俺が思っていたよりもずっと、苦しんでいた。
それなのに、俺の気持ちがさらにあいつを苦しめていたなんて……。
なにやってんだ、俺は。
「ださすぎるだろ」
だけど、ドナーが見つかれば葵は死ななくて済むんじゃないか?
そう思って移植のことも念入りに調べた。
一筋の希望がさしたけど、それもすぐに打ち砕かれる。