一生に一度の「好き」を、全部きみに。
昨日、不安だったはずの葵に俺はどんな態度を取った?
動揺してなにも言えず、去ってく葵の背中を見ることすらできなかった。
痛いくらいに握った拳が震えていることに今になって気づく。
カッコ悪いとこしか見せてねーじゃん。
なにやってんだ、俺は。
ふとしたときに葵は、どこかなにかを諦めたような表情を見せることがある。遠くを見て思いを馳せているような切なげな顔が、今になって鮮明に浮かんできた。
あれはこういうことだったのか……?
なぁ、葵。
正直戸惑いしかない。
俺は、どうすればいい……?
「おい、咲。何度も呼んでんのに! さっさと降りてこいよ」
兄貴がいきなりドアを開けた。
「母さんがブチ切れる前に早く。って、お前ひっどい顔。どうしたんだよ?」
「…………」
だんまりの俺に兄貴はなにも言わない。
「ま、いいけど。昨日のライブ助かったよ。また頼むわ。そういえば葵ちゃんきてたよな。どういう関係なわけー?」
「……振られた」
「えっ!」
「だから、振られたんだよっ。何度も、言わせんな……」