一生に一度の「好き」を、全部きみに。

わかんねーよ、俺だって。この涙はなんなのか。

動揺?

悲しさ?

切なさ?

どれにも当てはまらない。

「お前は弱すぎるんだよ。一度振られたぐらいでメソメソすんな」

「兄貴になにがわかるんだよっ……」

「あのなぁ、少なくとも俺はお前より生きてんの。恋愛のひとつやふたつやみっつやよっつ、経験してんだよ」

いやいや、多すぎだろ。

「経験値は俺の方が上なんだから、わかるに決まってるだろ。女子は押しに弱いから、何度でも押しまくれ。そしたらだいたいいけるから」

「だいたいって……」

そういう次元の話じゃないんだよ……。

葵は……。

「お前はどうしたいの? 葵ちゃんと最終的にどうなりたいと思ってる?」

「どうって、あいつの気持ちが知りたい……隣にいたいに決まってんだろ。けど……」

葵がそれを望んでない。

だからどうしようもない。

「あれこれ考えずに、ただお前がどうしたいかって話だよ。相手の気持ちありきなのは当然だけど、その前にお前の覚悟がなきゃなんも始まらないからな」

「覚悟……?」

「本気で好きなら、覚悟を決めろ。じゃなきゃカッコ悪いままだぞ」

俺は……どうしたいんだ?

頭がぐちゃぐちゃですぐには答えが出なかった。

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