一生に一度の「好き」を、全部きみに。

「俺なら、とことん話し合って相手を理解しようとする、かな。重大な秘密を打ち明けてくれるってことは、少なからず俺のことを大事に想ってくれてるってことだろ?」

「え?」

大事に想ってくれてる……。

そういう発想はなかった。何気に真面目っぽい表情を浮かべる翔。

「なんとも思ってないヤツに秘密を打ち明けたりはしないと思う。相当な覚悟を持って言ってくれたはずだから、ちゃんと向き合いたいって思う、かな。それ以前に好かれてなくて、振るための言い訳だったとしたら元も子もないけどな」

翔の言葉がズシッと胸にのしかかった。

『相当な覚悟を持って言ってくれたはず』

まったくもってその通りだ。

小さく肩を震わせながら泣いてた葵の姿が頭に浮かぶ。

心細かったはずの葵に、俺は……なにもしてやれなかった。

なにやってんだよ、情けなさすぎるだろ。

自分の不甲斐なさに頭を抱える。

あのときの俺は動揺しまくって、自分のことしか考えられなかった。

一番ツラかったはずの葵の気持ちを考えられなかった。

そんな自分に腹が立つ。

< 170 / 287 >

この作品をシェア

pagetop