一生に一度の「好き」を、全部きみに。
ひとりで部屋に閉じこもる日々が続いた。
だだっ広い部屋にひとりでいると、気が滅入って悪いことばかり考えてしまう。
大きな窓の前に立って外を見た。
一階だから庭の芝生しか見えない。今日も外は暑そうだ。ミンミンと蝉の鳴き声だけが響いている。
コンコン
「お嬢様……」
返事をせずにいると後ろでドアが開いた。
「勝手に入ってこないでよ」
どうして放っておいてくれないの?
「昨日もほとんどなにも食べていらっしゃらないので、心配しているんです。なにか悩みごとですか?」
「平木に言ったって、わからないよ」
「そう、ですか……」
明らかにシュンとした声。
心配してくれてるのに、こんなのはただの八つ当たりだ。
「平木は知ってるんでしょ?」
「なにを、でございますか?」
「私が二十歳まで生きられないって……」
「……っ」
「だから過保護なんだよね? 私になにかあったら大変だから……」
「な、そのようなことは…っ」
いつもは冷静な平木の悲痛な声に、やっぱりそれは真実なんだと悟った。
嫌ってほど思い知らされて、確実に訪れる未来に恐怖を感じる。
カタカタと全身が震えて、心が闇に落ちていく。
どこまでも真っ暗な闇に……。落ちたらもう、這い上がれないほどの。
運命だと受け入れたはずの未来。
それなのに、今になって怖いだなんて……。
いつからこんなに弱くなっちゃったの。強くならなきゃいけないのに。
好きな人に『好き』って言えない……。
こんな人生に……意味なんて、あるのかな。
私はなんのために生まれてきたの?
自分の存在意義がわからなくなる。
「お嬢様……」
「出てって。ひとりにして」
私の気持ちなんて誰にもわからない。