一生に一度の「好き」を、全部きみに。
突き放したのは私なんだよ……?
今さらむしがよすぎるでしょ……。
目的もなく駅前の本屋さんに何気なく入った。本がほしいわけじゃなくて、ただの暇つぶしだ。
ファッション雑誌のコーナーまできたとき。
「葵?」
ポンと肩を叩かれ、身体がビクッと反応した。
まさか……。
ウソ、でしょ。
恐る恐る振り返ると案の定、どこか気まずそうな表情の咲が立っていた。
下はジャージで上は大きめのᎢシャツ。髪の毛にも寝癖がついてて、まるで寝起きのよう。
「よう、久しぶりだな」
バクンバクンと高鳴る鼓動。全身の毛穴から汗が吹き出す感覚がする。
「う、うん」
「元気だったか?」
あれ?
なんだか普通だ。
少しよそよそしい感じはするけど、至って普通。
「ぼちぼちですな……」
「ふっ、なんだよ、ぼちぼちって」
そう言って笑う咲はいつもの咲だ。
「ぼちぼちだよ。よくも悪くもない感じ」
「いや、どっちだよ。はっきりさせろよ」
「はっきりさせられないから、ぼちぼちなんだよ……」
「相変わらず変なヤツ」
って、めちゃくちゃ普通……。
もしかして、意識してたのは私だけ……?