一生に一度の「好き」を、全部きみに。
「いこうぜ、送るよ」
「いい。帰りたくない」
「はぁ?」
若干イラッとしたような顔で睨まれた。だったら放っておいてくれたらいいのに。
「適当に時間潰すから、咲は帰って。じゃあね」
咲の横を通りすぎようとした瞬間、強く手首をつかまれた。
「待てよ」
「もうなんなのー?」
「なんかあったのか?」
なんかあったのかって、どの口がそんなことを言うの。
「気になるんだよ、好きだから」
「……っ」
「自分でもなんでお前みたいな女をって思うけど、ここ数日葵のことばっか考えてた」
やめて……。
なんで、そんなこと言うの。
「理屈じゃなくて、どうしようもなく葵が好きだ。振られても諦められない」
うつむき気味の咲の顔は見えない。
でも声はとても真剣で、冗談を言っているようには思えなかった。
「わ、私は……」
拒否しなきゃいけない。
この手を振り払わなきゃ。
そう思うのに、気持ちとは裏腹にどうしても行動に移せない私がいる。
だって本当は、この手を握り返したくて仕方がないんだもん。
咲に私のこと……受け入れてほしいって思ってる。