一生に一度の「好き」を、全部きみに。

「ね、葵。うちらまだ若いんだし、色んなこと経験しておいていいと思うんだ。自分の気持ちに素直に生きてみようよ」

「花菜……」

自分の気持ちに素直に……。

それは一番私が望んでいたことだ。

「想い合ってるふたりが一緒にいるのは、当然のことでしょ?」

「うん……」

「堂々としてなって。お似合いだよ、葵と鳳くん」

「……ありがとう」

花菜って私よりもずいぶん大人だ。ちょっと元気が出たよ。

「いいなぁ、葵もついに彼氏持ちかぁ。あたしはそういうの全然ないよ」

氷が溶けたアイスティーをストローでぐるぐるかき混ぜながら、花菜が言う。

「翔くんは?」

ガシャン

「え、ちょ、花菜……大丈夫?」

手元が狂ったのかコップを倒し中身がこぼれる。それでも花菜は気にすることなく、ものすごい剣幕で私を見た。

「そいつの話は今しないで」

「は、はい」

なにかあったのかな……?

でもこれ以上は怖くて聞けない。

「そ、そういえば花菜は夏休みどっかいったの?」

話題を変えて微笑む。

すると花菜も笑ってくれたからホッとした。

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