一生に一度の「好き」を、全部きみに。
これから夏期講習だという花菜と駅前で別れて、駅を抜けて川沿いを歩く。
ゆるやかな斜面の土手の芝生に腰かけながら、河川敷で遊ぶ小学生たちの姿をぼんやり見つめる。
『想い合ってるふたりが一緒にいるのは当然のこと』
普通に考えたらそうだよね。
だからそう言われてうれしかった。
私、咲と両想いなんだ。一夜明けてからひしひしとそれを実感する。
『今日から恋人同士っつーことで』
本当に私でいいのかな。
まだ夢を見てる気分だよ。
ドキドキと弾む心臓に手を当てる。心なしかいつもよりも鼓動が強く感じられた。
咲のことを考えるとダメ。自分でもわかりやすすぎるほど、意識しちゃっている。
ピローン
「わぁ!」
バッグの中に入れてたスマホが鳴って別の意味でドキッとした。
【今なにやってんの?】
たったひとこと、そんなメッセージがうれしいだなんて。友達から恋人に変わるだけで、こんなにも輝いて見えるんだ……。
【土手でボーッとしてるよ!】
短くそう返すとすぐに既読がついた。
【どこの土手?】
【桜野町の川沿いの土手★】
【マジで?すぐ近くにいるからとりあえずいく!】
「えっ!?」
う、ウソ……。
そりゃ会いたいけど、会いたいけど……。