一生に一度の「好き」を、全部きみに。
昨日の今日ですぐにそれはないと思っていた。そもそも付き合うって、具体的になにをどうするのかとか全然わからない。
でも、こういうことなのかな。付き合ったら、会いたいと思ったときに会えて、気持ちが通じ合ってると思うと離れていてもそれだけで幸せで。
今なにやってるのかなって思ったら、気軽に連絡を取り合える。そんな関係。
「葵!」
遠くの方で声がして咲が駆け足でやってきた。乱れた髪の毛に真剣な眼差し。どれだけ急いできたのかが、それだけでわかる。
肩で息をしながら、汗を拭う姿に思わずキュンとした。
「お前、バカ……? はぁはぁ、あっつ」
「ちょっと、なによ、バカって。開口一番にそれ? それにまたお前って言った!」
「うっせ。こんな炎天下にいたら熱中症になるだろ」
「大丈夫だよ、帽子かぶってるし」
「そんなこと言ってるヤツが倒れるんだよ」
会うといつものペースの私たち。
咲とのこんなやり取りが思いの外楽しいなんて、好きだからなのかな。