一生に一度の「好き」を、全部きみに。
甘くて苦い恋の味
長い夏休みが明けて二学期が始まった。
学校内での咲との関係は一学期とそう代わり映えはなく、至って普通。
そんなある十月頭の秋日和。
「邪魔」
朝、登校してきて靴箱の前でモタモタしていると背後から低い声がした。ちらっと振り返れば案の定、不機嫌モードの瀬尾さんが立っていた。
「あ、おはよう、瀬尾さん」
正直まだ苦手意識は拭えないけど、それでも二学期に入ってからはずいぶん和らいだ。
相変わらず私のことが嫌いなようだけど、今ではすっかりこの私も開き直っている。気にしないようにすれば、たいていのことはやり過ごせるしね。
「あんたさ、体は大丈夫なの?」
「え?」
珍しいこともあるもんだ、私の体調を気遣ってくれるなんて。
瀬尾さんは友達にも私の病気のことを言ったりはしていないらしい。
おかげで面白おかしく噂されることもなく『ちょっと身体が弱い子』として私はクラスメイトたちに認識されている。