一生に一度の「好き」を、全部きみに。
「今のところは順調だよ、ありがとう。心配してくれて」
「だ、誰があんたの心配なんてっ! あんたの秘密を知った以上、気になるだけ!」
場所を譲るとさっさと上履きに履き替えて瀬尾さんは去っていく。
秘密を知った以上、か。
そういうものなのか。
憐れみの目ではなく心配の目。言葉はきつくても、それを感じた。
素直じゃないだけで悪い子じゃないのかも。話してみないとわからないもんだな。
「あ、咲」
「よう」
咲が後ろからきて私の頭を撫でた。
「おはよう」
できるだけ冷静なフリをしながら挨拶を返す。
「瀬尾のヤツ、なんだって?」
「私の心配してくれた」
「ふーん、よかったな」
あまり興味がないのかそっけない返事。
だったら聞かなきゃいいのにね。
「もうすぐ文化祭だね」
「だな」
シーン。
はい、会話終了。広がりなし。
「あのさ、もう少し興味を示そうよ」
「うん。ねみー……」
いや、眠いって!
「夜寝てないの?」
「誰かさんからのメッセージ待ってたら夜が明けてた」
「え?」
誰かさんって。じーっと見られて、しまいにははぁとため息。
「え、私?」
「…………」
「ごめんごめん」
「バーカ」
ムッ。
でも悪いのは私か。
咲だって途中で返してこなくなることもあるのに。
そういうことでスネたりするんだ。
なんかかわいい。