一生に一度の「好き」を、全部きみに。
フロアの中でズンズンズンと大きく響く重低音。暗い部屋の中でスポットライトを一心に浴びる彼らは、私の目にはキラキラと眩しい。
ここは現実だけど、この世ではない別の世界にきたような感覚。
震える指先には、ここへくるときに受け取ったチケットの半券が握られている。
それをくしゃりと握り締めながら、涙で滲む視界を腕で拭った。
「きゃああああ!」
目の前の対象が新しいグループに変わってからというもの、さっきまでとは比べものにならないほどの悲鳴にも似た歓声が曲間に紛れこむ。
「こっち向いて〜!!」
「超カッコいい〜!」
ぎゅうぎゅうに詰まったフロアの中、一番うしろの隅っこで目深に被った帽子を脱ぎもせず、彼らを眺めている私はまちがいなくこの場に不釣り合い。
だけど今は、今だけは、そんな私に注目する人は誰もいない。
握りしめた拳が震えて、気づくと一筋の涙が頬を伝っていた。
拭いても拭いてもそれはとめどなくあふれてきて、どうやっても止まることはない。
自分じゃどうにもできないなんて、こんなのは久しぶりの感覚だ。
これが生きるっていうことなのかな。
まちがいなく、私は生きている。
生きてちゃんとこの場に立っているんだ。