一生に一度の「好き」を、全部きみに。
心にぽっかり開いた穴は、日に日に大きくなっていった。それは少しづつ大切ななにかが奪われていく感覚に似てる。
先には絶望しかない。未来に希望なんて見い出せない。
いつもの定期受診の日。平木に診察室を出てもらい、私は思い切って先生にたずねた。
「あとどれくらい生きられますか?」
「なにを言ってるの、葵ちゃん」
先生は目を泳がせて動揺し始めた。
「私には知る権利があると思います。自分の身体のことは自分が一番よくわかってる。私、もう長くは生きられないんですよね……?」
覚悟を決めたはずなのに、ブワッと涙があふれた。
「だって、先生が、お父さんにそう言ってたじゃん……っ。二十歳まで生きられるか、わからないって……っ」
あの瞬間、私はどん底に突き落とされた。
あがいても、もがいても、決して上がることのできない場所まで。
「葵ちゃん、それは最も低い可能性の話をしたまでよ。ドナーは必ず見つかる。そう信じましょう」
もし、見つからなかったら……?
どうしてそっちの可能性については言ってくれないの?
希望なんてとっくになくなった。
純粋に先生の言葉を信じて疑わなかった、小さい頃の私じゃないんだ。