一生に一度の「好き」を、全部きみに。

二年生でも咲とは同じクラスだった。あいうえお順に並ぶと咲は私の前だから席は前後。

「葵、プリント」

「あ、ごめん」

「ボーッとしてたのか?」

「うん」

無理に笑みを貼りつける。そうでもしないと不安に押しつぶされそうで怖かった。

「大丈夫か?」

「当たり前じゃん。なに言ってんのー!」

笑い飛ばしてみたけれど、咲は真顔で私を見つめるだけ。

「気分転換にどっか寄って帰るか」

決定事項のように言われて咲の中で決まったようだ。

「放課後空けとけよ」

そう言われてしまった。特に予定はないから、いいんだけど。

咲にはすぐに見抜かれるから、気を遣わせているようで居たたまれない。

それでも一緒にいられるのは素直にうれしい。

「葵ちゃーん、久しぶりっ! 元気?」

帰り際、翔くんに声をかけられた。翔くんとは二年生でクラスが離れてしまってから、会うのはかなり久しぶり。

「元気だよ」

翔くんは聞くまでもなく元気そう。

「そっかぁ。また四人で遊ぼうね! 花菜ちゃんにも伝えとくし」

ちなみに花菜と翔くんは同じクラス。花菜いわく、翔くんはまだ「ない」らしいけれど。

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