一生に一度の「好き」を、全部きみに。
咲はなにも言わずに聞いてくれた。抱きしめてくれている腕がかすかに震えている。
今まで苦しませていたのかもしれないと思うと、余計に涙があふれた。
私を好きにならなければ、出会わなければ、こんなに咲を苦しめることはなかった。
「死なない……葵は、死なない……助かるに決まってるだろっ」
「……っ」
本当は私もそうだと信じたい。だけどもしダメだったら……?
期待して傷つくのなら、最初から期待なんかしない方がいい。ずっとそう思ってた。
でも私は、生きたいんだ……。
死ぬ覚悟なんて、きっといつまで経っても持てるはずがない。
私はいつだって、そう、いつだって。
心の底では、ずっと『生きる』ことを望んでた。
諦めたフリをすることで、受け入れた気でいただけ。
「葵」
「ううっ、咲……っ」
思いっきり抱きついて、胸に顔を埋める。
大きくて優しい手のひらが、そろりと後頭部を撫でた。
この温もりを感じられなくなるなんて嫌だ。
できることなら、ずっと咲の隣で笑っていたい。
そんな未来を、望んでもいいかな?