一生に一度の「好き」を、全部きみに。

どれくらいそうしていたのかはわからない。

最後の授業終了を告げるチャイムの音にハッとした。

「咲……?」

「目ぇ覚めたか?」

「う、ん……ごめん、ね」

なにも悪くないのに申し訳なさそうに眉を下げる葵の姿に胸が詰まる。

「謝るなよ」

「うん……」

それにしてもまだ顔色が悪そうだ。もう少しゆっくりしてた方がよさそうだな。だんだんとそれがわかってきた。

「まだ寝てろよ」

「ううん、大丈夫……」

無理矢理笑顔を作ってから、葵は上体を起こした。長い髪がさらりと肩から流れ落ちるのを見て、不謹慎にもドキッとさせられる。

無意識に下から髪をすくい上げ、そっと葵の頬に手をやった。

「咲……」

う、やべ。

上目遣いで名前呼ばれるとか、やばすぎるだろ。

先生は会議でおらず、保健室という密室にふたりきりのせいか、余計に……。

「ごめん」

「咲になら、なにをされてもうれしいよ?」

「お前なぁ……」

こっちは必死に理性保ってんのに、ぶち壊すようなこと言ってんじゃねーよ。

「本当だよ?」

あー、もう。

葵の唇めがけて、触れるだけの軽いキスをする。

ふたりきりでいるといろいろとやばい。

「カバン取ってくるから、大人しく寝てろ」

赤くなった顔を隠しながら立ち上がり、葵から離れて保健室を出た。

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