一生に一度の「好き」を、全部きみに。
思わぬ再会
桜の季節がやってきた。
ひらひらと桜の花びらが舞う校門の前を颯爽と歩く。入学式を終えて三日目。
満開だった桜もこの数日でずいぶん散ってしまったけど、それでも今年の桜は長く咲いていたほうらしい。
生徒たちで賑わう校舎の中は、朝からこれでもかというくらい活気づいている。
一階の廊下の真ん中辺りにある教室のドアの前までくると、胸に手を当てて深く息を吸った。
大丈夫、私は大丈夫。
そう暗示をかけて、震える手でドアを開ける。
その瞬間、全員からの突き刺さるような視線を感じた。
また、だ。またこの目……。たくさんの好奇心や興味、嫉妬や羨望。受け止めきれないほどの感情がこもった視線。
「わぁ、神楽さんだぁ」
「今日も朝から後光が差してる」
「つーか、やべぇ。お嬢様オーラがハンパねぇ」
「さっすが、世界トップレベルの神楽財閥のお嬢様だよな」
私の席は教室の窓際の一番うしろ。そこへたどり着くまでの間、誰とも目を合わせることなく遠くを見つめながら歩いた。
「見た目もめちゃくちゃ清楚で儚げだし」
「尊すぎて、話しかけることすらためらわれるよな」