一生に一度の「好き」を、全部きみに。

「咲は将来の夢とかある?」

「なんだよ、いきなり」

将来の夢、ね。

「大学とかいくのかなって」

「得にない」

「そっかぁ。進路を決めるにはまだ早いか」

何気ない日常の会話も葵とだったら楽しい。

「けどまぁ、人の役に立つようなことがしたいなとは思ってる」

「おー、いいね。咲っぽい。シンガーソングライターとか?」

「いや、無理だろ」

人の話、聞いてたか?

役に立つことじゃねーじゃん、それ。

「咲の声に癒やされる人はたくさんいるはずだよ」

「俺、詩とか書いたことねーよ。作曲はなんとかできるけど」

あまりにも非現実的な葵の発想に思わず笑った。

「私はまた咲の歌声が聴きたいなぁ」

うっとりした表情で話す葵の横顔にキュンとする。

シンガーソングライターとか……。

現実的に考えてありえないだろ。

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