一生に一度の「好き」を、全部きみに。

「葵は将来なにがしたいんだよ?」

「私……?」

その瞬間、葵の表情が曇ったような気がした。

「私はとりあえず、毎日を精いっぱい生きることを目標にがんばろうかなって。それだけ」

毎日を精いっぱい生きる。

命の危機に直面していない俺には当たり前の日常。特に考えたりしたこともなかった。

でもそれは、葵には奇跡のようなもの。

「俺がずっとそばにいてやるよ」

「ふふ、ありがとう」

そんな寂しそうな顔で笑うなよ。

葵には心から笑っててほしい。せめて俺といるときくらいは、余計なことは考えずにいてほしい。ツラさとか不安を取っぱらうことができたら、どれだけよかったか。

< 223 / 287 >

この作品をシェア

pagetop