一生に一度の「好き」を、全部きみに。
「好きな人のおかげ……かな」
「そう。いいことね。それが葵ちゃんの生きる気力になってるんだもの」
「生きる気力……」
「強い思いが奇跡を起こすこともあるから、諦めないで」
いつの間にか咲の存在が私の生きる気力になっていたなんて……。
目に浮かんだ涙をぬぐいながら、咲の顔を思い浮かべる。
大好きで、大切で、かけがえのない存在。咲を悲しませるようなことだけはしたくない。
私が不安でいると、咲まで心配そうな顔をする。強くならなきゃ。
「葵、おはよう!」
「おはよう、花菜」
次の日、昇降口で花菜に出会った。クラスがちがうから、なかなか会えないのが寂しい。
「あ、そうだ。今日の放課後空いてる? 黒田がさー、またテスト勉強教えろって! ふたりきりじゃ嫌だから、葵もきてくれない? 今日は学校の空き教室でやろうと思ってるんだ」
「あはは、いいよ。でも咲にも聞いてみるね」
「うん、また返事ちょーだい」
花菜と並んで歩きながらお互いのことを話す。
あっという間に教室が近づいてきて、廊下の踊り場に咲と翔くんの姿が見えた。