一生に一度の「好き」を、全部きみに。
「もー、男子ってホントバカじゃない?」
「言えてる~!」
小さな頃からどこにいても常に注目されてきた。見られることに慣れているけど、近くで自分のことを聞くのは……。
すごく気まずい。
うちのクラスは男女含めて同じ中学出身の子たちが多いようで、まだ入学してから三日しか経っていないというのに和気あいあいとしている。
「中学までは桜花女学院に通ってたんだろ? 超一流のお嬢様校から、なんでこんな普通の高校にきたんだ?」
「さぁ? 本人に直接聞いてみれば?」
「バカ、聞けるかよ……! お嬢様だぞ! 住む世界がちがいすぎるだろ」
椅子に座ってスカートの上で拳を握る。下を向きながら視線を一点に集中させていると、ヒソヒソと話す女子の声が聞こえた。
「神楽さんって、なんだかお高く止まってるよね」
「庶民のうちらとじゃ話も合わないだろうし、ひとりのほうがいいんじゃない?」
そんなことは、ないんだけどな……。
「あの神楽財閥だもんね。お嬢様って、どんな話をするんだろう」
「ねぇねぇ、それよりこれかわいくない?」
入学してから仲良しと呼べる友達はまだいない。その理由は私の家がちょっとだけ特殊だから、ということにある。