一生に一度の「好き」を、全部きみに。

「あのふたり、クラスが離れてもなんだかんだで仲いいよね」

じゃれ合うふたりを見ながら花菜が苦笑する。

「そうだね」

「葵も鳳くんとうまくいってるみたいで羨ましいなぁ。あたしも彼氏ほしーい!」

「モテるのになんで誰とも付き合わないの?」

「うーん……なんかどの人も軽そうっていうか、あたしに声かけてくるのそんな人ばっかりでさ」

「え、なになに? なんの話?」

「きゃあ」

背後から顔を見せた翔くんの姿に驚いて思わず叫んだ。

「葵ちゃん、ひどいなぁ。悲鳴あげるなんて」

冗談っぽく笑いながら肘でつんつんと脇腹を小突いてくる翔くん。

「おい、やめろ」

それを見た咲が私と翔くんの間に割って入ってきた。

さり気なく肩を抱かれて、思わずドキッとする。

「おーおー、お熱いことで。俺にもその熱わけてくれー!」

「バカ」

花菜がすかさず突っ込む。翔くんに対して、ますます遠慮がなくなっている。

翔くんは翔くんで花菜に絡まれてうれしそうだし、やっぱりふたりはお似合いだと思うんだけどな。

勉強見てあげようとしてるあたり、花菜は翔くんを嫌いってわけではなさそうだし。

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