一生に一度の「好き」を、全部きみに。
「黒田なんて放っておいて、いこいこ!」
「そりゃないよ、花菜ちゃん」
「うるさい、ついてこないで」
ふたりの背中を見つめながら、クスクス笑ってしまう。すると、隣からじとっとした視線が。
「翔と距離近すぎ」
唇を尖らせた不機嫌そうな咲がボソッとつぶやいた。
「ボーッとしすぎなんだよ」
「ふふ」
「なに笑ってんだよ」
「べっつにー?」
「ニヤニヤしやがって、ムカつくヤツだな」
「いひひ。あ、ちょっと」
髪をわしゃわしゃ乱されて、思わず両手で咲の手をつかむ。
「やめてよー!」
「葵が笑うからだろ」
その手を握り返され、そっと下ろされる。
指と指は絡み合ったまま、手のひらをさらに強く握られた。
う、恥ずかしい……。
学校ではあまりベタベタしないから、余計に……。
咲に触れてるところが温かくて、どんどん熱くなっていく。
「ねぇ、また身長伸びた?」
「ああ、ここんとこ節々が痛いから伸びたかもな」
「すごいね」
「葵は変わらずチビのままだな」
「うるさいなぁ」
ムッと唇を尖らせると、今度は咲に笑われた。