一生に一度の「好き」を、全部きみに。
ゴツゴツした男っぽい手も、分厚い胸板も、サラサラの髪の毛も、咲の全部にドキドキさせられる。
虹どころじゃないよ。
目の前の咲で、私の全部が精いっぱい。
「おー、すげーじゃん」
「咲、おろして」
「うん」
太陽の光がさんさんと降り注ぐ春のひだまりの中、私たちは手を繋いだまま空を見上げた。
どこまでも澄みきった薄青の中に、はっきりくっきり浮かぶきれいな虹。
でもやっぱり私は、隣の咲が気になってばかり。無意識に唇に目がいってしまう。
「キス、したいな……」
なんて。
ちょっと思っただけ。
空を見上げてたはずの咲が振り向いた。
ん?
あれ……?
もしかして、私、今声に出てた?
「う、ウソウソ! 今のは冗談!」
わー、キスしたいとか!
無意識に口に出しちゃうなんて!
恥ずかしすぎる。
「冗談なんだ?」
「……っ」
「俺はいつでもしたいけど」
「え……?」
ドキンドキンと、高鳴り始める鼓動。
『いつでもしたいけど』
『いつでも』
「葵もそう思ってくれてんの?」