一生に一度の「好き」を、全部きみに。
『俺、またライブ出ることになった』
「そうなの?」
『うん。しかも今度は単独。兄貴経由で話がきたんだ』
「すごいじゃん! よく出る気になったね」
『葵が……』
咲はそこまで言って黙り込んだ。
「うん?」
『喜んでくれるかなって思ったから』
「もちろんだよ! 絶対いくから!」
私のためだなんて、うれしすぎる。
『そう言うと思ってチケット押さえた』
「さすが。ありがとう! 楽しみにしてるね」
ライブは再来週の土曜日らしい。やたらとテンションが上がったまま通話を切った。
楽しみだな、咲の単独ライブ。
楽しみすぎて一気に元気が出てきた。
息苦しさも和らいだ気がする。
あー、本当に楽しみだな。
次の日は少し回復して、学校にいくことができた。
教室では咲の単独ライブの話で盛り上がっている。
クールで無口な咲だけど、二年生になってからは中学のときの友達がクラスに多くいるせいか、いつも誰かしらに囲まれている。
冷たく見えても基本的には優しいヤツだから、友達が多いのもわかる。
「すごいじゃん、咲くん!」
「あたしもライブいきたいっ!」
「俺もいくよ」
「恥ずいから、絶対くんな。なんでクラス中に広まってんだよ」
「そりゃ噂にもなるよ。咲くんは有名人だもん」
「有名人、ね」
「本当だよ?」
「くだらない」
もー!と頬を膨らませながら咲の腕に軽くボディタッチをするお色気たっぷりのクラスメイト、葉月さん。
髪の毛を巻いて、メイクもバッチリ。胸がすごく大きくて、唇プルプルの女子力高めの女の子。