一生に一度の「好き」を、全部きみに。

ちょっとだけ……いや、かなり?

桜花女学院もクラスメイトたちを遠ざけてしまう理由のひとつだと思う。

桜花女学院は国内でもお嬢様校であることで有名な学校で、幼稚部から大学までひと通り揃っていて、私は幼稚部からずっと桜花に通っていた。

それが一流のお嬢様であることのステータスであり、桜花に憧れる女子も少なくはなかった。

当然のように桜花に入って、なに不自由なく大学まで進んで、就職してって、将来のプランが約束された人生を送ってきた。

これまでずっと親に敷かれたレールの上を歩いてきた私だったけど、でもある時気づいてしまったの。このままでいいのかなって。

だって私は、ただの一度も自分の足で歩いたことがないから。

自分の好きな人生を送ってみたい。誰にも邪魔されたくない。思い立ったら行動派の私は、気づくと桜花をやめていた。

(おおとり)くん、今日も来ないのかな?」

「風邪だっけ? 一度も来てないよね」

「どうしちゃったんだろう」

「早く会いた~い」

きゃあきゃあと楽しそうな声がする。

鳳くんっていうのはどうやら私の前に座る男子のことらしく、入学式から毎日のように女子たちの間で噂になっている。

「鳳くんと同じクラスなんて嬉しすぎるっ!」

「だよね!」

「早く拝みたい~!」

入学式の時、目を潤ませながら感極まっている女子もいて、ビックリしてしまった。

どうやら鳳くんという人は相当な人気者らしい。

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