一生に一度の「好き」を、全部きみに。
息苦しくて寝返りを打つことができず、なにか喋るだけでも息が切れた。
「心不全よ。入院して絶対安静。たまった水が抜けたら楽になると思うから」
入院……。
うそ、やだ。
返事をする代わりに大きく首を横に振る。だって、そんなの困るよ。入院なんかしたら、咲のライブにいけなくなっちゃう。
「葵、先生の言うことを聞かなきゃダメだろう?」
お父さんが諭すような口調で言う。家のことを平木に任せっきりのお父さんが、私のために病院にきたというのなら、私はよっぽど重症ということなのだろう。
私はたまらずに咲の顔を見上げた。
眉を下げ、力なく笑う咲。よく見ると顔が強張っているような気がする。
「咲……?」
どうしたの……?
私、そんなに重症っぽく見える……?
「葵ちゃん、正直に言うわね」
え?
なに?
やだ。
とっさにそう思い、耳を塞ぎたい衝動に駆られる。
でも体が動かないから、それも無理で。今の私にはなにもできない。
「葵ちゃんの心臓ね」
ドクンドクン。
「止まったの」
「え……」
「そこの彼が救命処置してくれたから大事には至らなかったけど、次またいつ発作が起きてもおかしくない状態よ」
胸が痛くても、どれだけ苦しくても、泣くことさえできない今の私。