一生に一度の「好き」を、全部きみに。

心臓が止まった。

その事実が怖くて震えた。前が見えない。とうとう私もここまでなのかな。

「今が正念場よ。乗り越えてドナーが見つかることを信じましょう」

最後の方の言葉が耳に入ってくることはなかった。

平木やお父さん、そして咲も私になにか言ってたような気がするけど、聞ける状態じゃなくて。

ただ必死に天井を見つめながら持って行き場のない感情を胸の奥に押し込めた。

夜になって病室にひとりぼっちになると、機械の音がやけに耳についた。

心電図のモニターは私の心臓に合わせてリズムを刻んでいる。ちゃんと動いてる。動いてるのに……。

本当に止まったの?

ねぇ、なんで。嫌だよ。

死にたくない。

そんなことを考え出すと止まらなくなった。

怖い。自分が自分じゃなくなりそうで。

死んだら人ってどうなるの?

今までだって覚悟はしてた。でも実際に心臓が止まったと聞かされて、今まで曖昧だったものがもうすぐそこまで迫ってきているんだと思わずにはいられない。

咲だって今日は強張ってた。

心臓が止まった私を目の当たりにして、どう感じたのかな。

怖かったはずだよね……。

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