一生に一度の「好き」を、全部きみに。

ライブ当日の土曜日、花菜と翔くんがお見舞いにきてくれた。

「思ったより元気そうでよかったよ!」

「ごめんね、ふたりとも」

「謝るなって! 咲のライブの動画楽しみにしててよ。ライブハウスに許可取って生で配信するからさっ!」

「ちょっと黒田、多勢に晒すのはやめなさいよ?」

「わかってるよ、葵ちゃん限定で配信すっから!」

グッと親指を立てる翔くん。それを見て花菜が呆れたように笑った。

花菜には詳しい病気の話はしてないけど、今回の入院をとても心配してくれている。翔くんに至っては、直接話してないからどこまで知ってるのかは謎だ。

でもきっと、私がなんらかの病気だということは知っているはず。

「とにかく安静にね。またライブ後に連絡するから」

「うん、ありがとう」

ふたりによくお礼を言って、ぎこちなく笑ってみせた。これが今の私の精いっぱいの笑顔。

ライブにいけないってわかってから、気力がどんどん削られているような気がする。

< 246 / 287 >

この作品をシェア

pagetop