一生に一度の「好き」を、全部きみに。
ライブ当日の土曜日、花菜と翔くんがお見舞いにきてくれた。
「思ったより元気そうでよかったよ!」
「ごめんね、ふたりとも」
「謝るなって! 咲のライブの動画楽しみにしててよ。ライブハウスに許可取って生で配信するからさっ!」
「ちょっと黒田、多勢に晒すのはやめなさいよ?」
「わかってるよ、葵ちゃん限定で配信すっから!」
グッと親指を立てる翔くん。それを見て花菜が呆れたように笑った。
花菜には詳しい病気の話はしてないけど、今回の入院をとても心配してくれている。翔くんに至っては、直接話してないからどこまで知ってるのかは謎だ。
でもきっと、私がなんらかの病気だということは知っているはず。
「とにかく安静にね。またライブ後に連絡するから」
「うん、ありがとう」
ふたりによくお礼を言って、ぎこちなく笑ってみせた。これが今の私の精いっぱいの笑顔。
ライブにいけないってわかってから、気力がどんどん削られているような気がする。