一生に一度の「好き」を、全部きみに。

次の日、日曜日だったこともあって咲は朝からお見舞いにきてくれた。

ライブは大成功だったようで、咲は大役をやり遂げたあとの達成感いっぱいの表情を浮かべている。

「すごかったよ、本当に。私のために作ってくれた曲も、感動しちゃった」

昨日は保存した動画を何度も観て、咲の歌声を聴きながら眠りに就いた。するとぐっすり眠れたんだよね。

「ありがとう、咲」

ねぇ、大好きだよ。

何度言っても足りない。

「葵が喜んでくれてよかった」

近くのパイプ椅子に座った咲に手を握られる。

「わ、私汗すごいよ」

触れられることに抵抗があって、思わずそんなふうに言ってしまった。

髪だって入院してから洗ってない。夏だから、汗くさかったら嫌だな。一応明日ベッド上でシャンプーしてもらえることになってるけれど。

今日してもらえばよかったかな。

「そんなの俺の方がすごいし、どんな葵だって気にならないよ」

私は気になるんです。

かわいく見られたいんです。

そういう乙女心を、咲はきっとわかっていない。

それとも優しいから、そんなふうに言ってくれるのかな。

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