一生に一度の「好き」を、全部きみに。
旅立ちの日に
お父さんにアメリカ行きの件を伝えると、善は急げということで三日後に発つことが決まった。
飛行機は心臓に負担がかかるので少しでも早い方がいい。医療スタッフが数名同行しての手厚いフライトになるらしく、私はそれだけ重病人なんだと思い知らされた。
正直、めちゃくちゃ怖い。
うまくいかなかったときのことを考えたくなんてないのに、恐怖が拭えない。
立ち上がることさえできない、弱々しい私。最近ではすごく痩せたから、鏡を見るのも嫌だった。
コンコン
ドキリと胸が鳴る。
返事をしていないにも関わらず、部屋の扉がスッと開いた。
「よう」
そこには気まずそうに目を伏せる咲の姿。
目を真っ赤に充血させて、疲れきった顔をしている。
「お疲れ」
さらには声が少しかすれていた。
私のせいで、そんな顔をさせているんだ……。
私から解放されたら楽になるのに。
「咲、聞いて」
私は咲の幸せを願ってる。
だから、ね。
「お父さんがアメリカにいかないかって。あっちの方が医療が進んでるんだって」
「え、アメリカ……?」
咲は大きく目を見開いた。