一生に一度の「好き」を、全部きみに。

「葵への気持ち。それしか見つからなかったんだ」

「咲……」

どうしてそこまで……。

そう思ってくれるだけで十分だよ。

咲を好きになってよかったって、今なら心から言える。

私に恋する気持ちを教えてくれてありがとう。

咲には幸せになってほしいから、好きだと言いそうになるのをこらえて唇を噛んだ。

「それが正直な気持ちだから、覚えといて」

「うん……」

覚えとく。

「俺、結構しつこいし頑固だから、それも覚えとけよな」

「う、ん……」

胸が詰まって途切れ途切れの返事になった。最後だから、私もちゃんと伝えよう。

「私、咲がいたから生きたいって思えた」

「うん」

「ありがとう」

感謝の気持ち、それしかない。こんな私を好きだと言ってくれてありがとう。たくさんの思い出も経験も、咲とだから楽しかった。

思い返せばツラいことばかりじゃなかった私の人生。

自由に生きると決めてからの私の世界は、思えばどれもキラキラ輝いていた。

その思い出があればがんばれる。

だから、最後は笑顔でバイバイしよう。

「じゃあ、元気でね」

「葵……」

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