一生に一度の「好き」を、全部きみに。

辺りをキョロキョロしてみるけれど誰の姿も見えない。それどころか、フェンスの向こうから聞こえているような……。

見下ろそうとしても、当然見れるはずもなく。

でも、だって、この下にあるのは教室だよね……?

屋上のすぐ下の四階には、たしか化学実験室や多目的ホール、音楽室があったはず。

完全に好奇心。恐る恐る屋上から四階にきた私は、ドキドキしながらその声の主を探す。

口ずさんでいる歌の曲名はわからないけど、ゆったりしたバラードのようで、感覚的になんとなく好きだと思った。

どこまでも果てしなく続く廊下の突き当たり。そこは音楽室で、近づいていくとだんだんとその声が大きくなってきて、次第にはっきり聞こえるようになった。

うしろのドアからそっと中をうかがうと、窓際にひとりの人が立っていた。

向こうを向いてるから顔はわからないけど、背が高くてスタイルがいい。ズボンを腰ではき、両手をポケットに突っ込んでいる姿は少しやんちゃっぽくも見える。

窓から入ってくる爽やかな風が、その人の黒髪を揺らした。

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