一生に一度の「好き」を、全部きみに。

そう祈りながら、毎回アップする。

そしたらありがたいことに、たくさんの反響がある。フォロワーも増えて、何万人もの人が俺の歌を聴いてくれた。

その中に葵がいればいい。会えなくても、声が聞けなくても、生きていてくれればそれでいい。

何気なく通知ボタンをタップしてコメントを開いた。

『感動しました!』

『透き通るような歌声ですね!』

『イケメンすぎる〜!』

『ギターもうまいなんて!』

流し見していくと、あるひとつの投稿に手が止まった。

『いつも生きる気力をもらっています。ありがとう』

なぜかドクッと胸が鳴った。

このようなコメントは初めてじゃないのに目が離せない。

アカウント名は『A』。

って……まさか。

いやいや、安直すぎるだろ。

閲覧用なのかプロフや画像は初期設定のまま変えられておらず、フォロワーはゼロ。フォローしている人物も、俺だけというシンプルなアカウントだった。

アカウント名がAだからって、葵だとは限らない。それなのに、どうしてか気になる。

この四年、どこかで葵との繋がりを期待していたから。

葵……。

俺は今でも、お前が好きだ。

この気持ちはなにひとつ変わっていない。

葵が望むならと別れを受け入れたけど、どうすれば忘れられる?

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