一生に一度の「好き」を、全部きみに。

会いたい。何度そう願ったかはわからない。そのたびに葵の悲しげな顔を思い出して、苦しくなった。

もう四年も経つのに、忘れるどころか日に日に会いたい気持ちが強くなっていく。

この手で強く抱きしめたいと、何度夢見たことか。

まだ諦めたくねーよ……。

せめてもう一度、もう一度だけ──。

会いたい。

そう思ってもなす術なんてない。

連絡先も知らなければアメリカでの転院先もわからない。なんの接点もなかった空白の四年間は、あまりにも大きすぎる。

それでも会いたい気持ちとが反発し合い、心の中はぐちゃぐちゃだ。

「会いたいんだろ? 葵ちゃんに」

「…………」

「我慢せずに、正直になれよ」

「会いたいよ」

胸の奥底からふつふつとこみ上げる葵への気持ちを、我慢できそうにない。

「じゃあ会いにいけ。幸いにも今は夏休みだし、全力でなにかするのも悪くないんじゃねーの?」

「簡単に言うなよ」

俺だって、会えるなら会いたい。

「いつまでもこのままじゃ、お前も前に進めないだろ。二十歳になるんだし、けじめつけろよ」

翔の言葉が胸をえぐった。

俺たちは今年二十歳になる。

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