一生に一度の「好き」を、全部きみに。
「お前も俺も、もう子どもじゃなくなるんだよ。いつまでもそんなんじゃダメだろ」
なんだよ、急に真面目になりやがって。翔らしくねーんだよ。
反論しそうになったけど言葉が出てこない。なにもかも翔の言う通りで、今の俺はただ真実を知るのが怖いだけの臆病者だからだ。
ドナーが見つかったのかも、生きているのかもわからず、怖くて確かめることもできなかった。
いい加減きちんと向き合わなきゃいけないのかもしれない。
次の日、俺は葵が入院していた病院へ出向いた。
突然の訪問に一医者が会ってくれるわけもないことは重々承知している。
午前の診察が終わったのは午後二時をすぎてからで、最後の患者が出ていったのを見計らい、診察室のドアをノックした。
「失礼します」
「あら、まだ患者さんいたの?」
背もたれのある椅子にゆったりと腰かけた中年の女医が、目を丸くする。
「あれ、きみ、確かどこかで」
「鳳です。鳳咲です。突然すみません。先生に聞きたいことがあってきました」
「鳳、くん? って、まさか、葵ちゃんの?」
「そうです」
「…………」