一生に一度の「好き」を、全部きみに。
大きな病院だ。プライバシーはしっかり守られるだろう。それでも葵の手がかりになるようなことがあれば、どんな小さなことでもいいので教えてほしい。
「葵は無事なんですか?」
「ごめんなさい。守秘義務があるから答えられないの」
「俺も今医大に通ってるんで、それはわかってます。それでも葵のことが知りたい。お願いします、教えてくださいっ!」
直角に近い勢いで頭を下げた。
なりふりなんてかまってられず、ただ葵のことが知りたい一心だった。
先生の返事は変わらず「答えられない」の一点張り。思った通り想定内の反応。
そりゃそうだよな。個人情報をもらしたとなると、それこそ問題だ。
だけど俺だってすぐには諦められない。
葵の家にいって門番にたずねたけど、詳しく知らされていないのか『数年前に仕事の都合でアメリカに移住してから、一度も戻ってきていない』と教えられた。
打つ手なし。
どうすればいいと嘆く前に、できることを全部やる。
「またきたの?」
「教えてくれるまで何度だってきます。先生しか頼れる人はいないんで」
「あのねぇ、何度きたって答えは同じ。個人情報は教えられないの」