一生に一度の「好き」を、全部きみに。
ど、どうしよう。
私はすぐにわかったけど、咲は私のこと覚えてないのかな。
たった数週間前の出来事だけど、私には刺激的すぎてつい昨日のことのように思い出せる。
忘れたことなんてなかった、咲の歌声。
「きれいな、歌声だなと思って……」
「…………」
「いや、だから、きれいな歌声に誘われたの」
「なに言ってんだよ、おまえ」
バカじゃねーの、と語尾にでもつきそうなそんな口調。あの日も相当態度が悪かったけど、今日も俺様ぶりは健在だ。
「また、おまえって言った……!」
パッと顔を上げてプクッと頬を膨らませる。背が高いから顔を真上に上げなきゃ咲の顔が見えない。
「おまえって言われるの、嫌いなんだけど」
「え?」
戸惑うように揺れる咲の真ん丸な瞳。力強いまっすぐな瞳が困惑しているのがわかる。
見つめ合うこと数秒、咲がハッとしたように目を見開いた。
「まさか、あお、い?」
信じられないと言いたげに、吐き出されたその声。
「ふふっ、やっと気づいた?」