一生に一度の「好き」を、全部きみに。
「待てよ……」
グイッ。
力強く腕をつかまれ、動きを止められる。ゴツゴツした男の子らしい手は当然だけど私のよりも遥かに大きくて、思わずドキッとしてしまった。
「な、なに?」
「あ、いや、その」
さっきはあんなにハキハキしてたのに、どこかよそよそしくてはっきりしない。でも覚悟を決めたのか、咲は言いにくそうに口を開いた。
「大丈夫なのかよ?」
「え? なにが?」
「なにがって……おまえ、じゃなくて葵が、前に大丈夫じゃなさそうな顔してただろ?」
「え、あ、前?」
もしかして、あの日のことを言ってるの?
あの日、理由も聞かずに突然逃げ込んできた私をかくまってくれて、すごく迷惑をかけてしまった。
不本意かもしれなかったけど咲は最後まで一緒にいてくれて、なにも言わずに出て行く私に理由を聞かなかった。
もしかして、心配してくれてたの……?
「なにかから逃げてたんだろ?」
「うん、でも、大丈夫だよ。心配してくれてありがと」
「ばっ、誰が心配なんかするかよ!」
咲は「バカじゃねーの」と言って、最後にはプイとそっぽを向いてしまった。
隠しているつもりなんだろうけど耳まで真っ赤。思わず笑ってしまいそうになったけど、口元に手を当ててこらえた。