一生に一度の「好き」を、全部きみに。
「うっざ」
私だけに聞こえる声でつぶやくと、咲はざわつく声をスルーして席に着く。
これだけ騒がれたらそう思うのも無理はないけど、口が悪すぎじゃない?
しかも咲は私の前の席だなんて、なんの因果かな。これから大丈夫だろうか。なんて、少し不安になる。
だけどその不安はすぐに消え去った。というよりも、不安に思うほど咲との接点はなく、教室でもほとんど会話はなかった。
一匹狼だと思っていた咲には意外と男友達が多くて、ひとり浮いているのは私だけ。
友達ってどうやって作るんだっけ。
教室に居づらくて気づけば昼休みのたびに屋上に足を運んでいる。
ポカポカしてて、気持ちいいなぁ。
大の字で寝そべりながら、ぼんやりする時間はとても贅沢。
友達がいなくても、学校生活の中でこの瞬間だけはすごく癒やされるんだ。それだけで通う価値があるってもんだよ。
ガチャ。
「毎日こんなところにいたのかよ」
屋上のドアが開いて咲がやってきた。
私は寝そべったままその姿を捉えて、思わずムクッと起き上がった。
「まぁね」
「体育とかにも出てねーし、サボり魔なんだな、お前。それにこんなところに無防備に寝転がって、バカじゃねーの」
太陽の眩しさに目を細めながら咲は悪態をつく。