一生に一度の「好き」を、全部きみに。
次の日も、その次の日も、咲は昼休みになると屋上に現れた。
「友達とすごさなくていいの?」
「葵こそ、ぼっちで寂しくないのかよ」
「心配してくれてるの?」
「誰が心配なんかするかよ」
「ふふ、ありがとう」
「マジで心配なんかしてないからな、俺は。ただ葵がいつも教室を出てくから、気になるだけだ」
まったく成り立っていない会話。でもその中に咲の優しさが垣間見える。なんだかんだ言いつつも、気にしてくれているんだ。
まったく、素直じゃないんだから。
咲とは込み入った話をするわけじゃない。一緒にいる短い時間の中で、むしろ会話がないのがほとんどだけれど、不思議と隣にいると落ち着いた。
「ねぇねぇ、さっくん」
「誰がさっくんだ、誰が」
「ちょ、なにスネてんのよ」
「うっさい。二度とさっくんとか言うな、バカ」
「バカって言う方がバカだし」
ふたりでアスファルトの上に寝そべりながら、言い合いをする。何気ないこんな時間が楽しい。
転がりながらこっちにきた咲は、肘をついて上から私を見下ろす。その顔は不機嫌。
影が落ちてきたのと、距離が近いことに驚いたのは同時で、私は目を見開いた。
「な、なに?」
ドキンと高鳴る鼓動。近くで見れば見るほど、咲は整った顔をしていることがわかる。
「ぷっ、照れてんの?」
からかうような余裕の表情がムカつく。こんなヤツに赤くなってる私も、いったいなんなの。
「真っ赤なんですけど」
「うるさい」
咲に背を向けて、ゴロンと寝返りを打った。まだ心臓がバクバクしてる。なにこれ、変なの。
そんな私の心情を見透かすように、背後からクスクス笑う声が聞こえて。私はますます振り返ることができなくなった。