一生に一度の「好き」を、全部きみに。
初めての友達
命短し、恋せよ乙女。
電車の宙吊り広告の端っこに書いてある一文から目が離せず、吊革につかまりながらぼんやり眺めていた。
恋、ね。
恋……か。
もちろんだけど初恋はまだ。一カ月の高校生活で友達もできない私に、恋なんてハードルが高いことができるわけがない。
したいとも思わないし、できるわけがないとも思っている。
最寄りの駅に着き、ロータリーに停まっている黒塗りの高級車を発見してため息をひとつ。
ズカズカ歩いて車に近寄る。
するとドアが開いて中から長身の男性が姿を現した。
「おかえりなさいませ、葵お嬢様」
私の付き人の平木だ。冷静沈着、品行方正。屋敷の中でも頭の切れる天才で、そつなく仕事をこなしている。年齢不詳で二十代に見えなくもないけど、私が幼稚園の頃からいるのでもっといってるはず。
「迎えにこなくていいって言ってるでしょ。何度も言わせないで」
「そういうわけにはいきません。本来なら学校まで出向くところを、これでも譲歩しているんですから」
ああ言えばこう言う。話が通じない。頑固者。